「7月の愚痴」
何だかんだと云ったって君も女なのさ
そりゃ妻って立場もあるし 世間体もあるだろうけれど
あの娘と会う帰り路 美味しい角の洋菓子屋のケーキを強請る
自分にも良い男がと 縁の切れていない男の縫いぐるみを抱く
あゝ何時まで続く 寄り合いの男と女とは言わないまでも
あの娘はあの娘で 今度会う約束の天気を気にする
雨風の日にそこまでしてと体裁なのか 傘が壊れる心配をする
独りの君だから 生きづらさは歩き難くてしようがない
友達同士と見られなくてか そう今は君にとっての悪い話なんだろう
あゝ何時まで続く 寄り合いの男と女とは言わないけれど
今更何もかも捨てて 新しい女とのめぐり逢いなんて
言葉で分かり合わなくても 何か落ち着ける暮らしがまたあるなんて
男はいつだって 知り得ない明日に憧れ確かな今日まで彷徨い歩くもの
今夜も少しばかりいい気分 云いたいだけの男のラブソングと片付けて
あゝ何時まで続く 寄り合いの男と女じゃないか
「雨上がり」
冷めたコーヒーを 一息の後を
真っ新なキャンパスに 詰め込んでいく
構える何かは 拾う言葉がいつも
塞ぎ込むまい 今日も雨の朝
予定を入れるか 月讀神社
いつか晴れるか…
卯月は急いで 今年は五十五
気づかない日々でいて 愁(うれ)えるよりは
語れる何かは 拾う言葉でいつも
静かいつから 小雨鳥の歌
午後から出かける 病院見舞い
散歩ついでに
語れる何かは 拾う言葉でいつも
ありふれている 外は 雨上がり
「微笑」
ゆっくりと消えていこう
いつかは二人
いつかは二人
空の行方(ゆくえ)を見届ける
慰めをその前に
僕へと渡して
僕へと渡して
束の間に微笑む君
いつでも二人
いつかは二人
明日(あす)も行方を見届ける
慰めはその後に
君だけ見つめて
君だけ見つめて
「家にいよう」
彼女の歯が痛いから
陽気にはなれない
今日は桜まつりらしい
行く気にはなれない
処方箋を出しに行こう
夜はうどんにする
出店は一人じゃ つまらないから
ベランダでは 母娘(ははむすめ)
横になったままで
今は先にスマートフォン
行く気にはなれない
お姉さんがお洒落してる
帰り焼き鳥屋で
このままメモ帳 閉じてもきっと
…家にいよう
|